『ファミレスを享受せよ』は永遠のファミレスに迷い込むアドベンチャーゲームで
ブラウザでフリーゲームとして公開されています。
私はSwitch版をダウンロードしてプレイしました。
こちらは有料となっておりますが、イラストギャラリー・サウンドギャラリーが追加されています。
この記事ではこのゲームに関するネタバレが存分に含まれます。
未プレイの方はまずゲームをプレイしてみてください。
とても良いゲームです。
攻略はこちら→ 【ファミレスを享受せよ】攻略まとめ
Switch版について
私はSwitch版でプレイしましたが、こちらはフリーゲームとして、ブラウザでできます。
PC用に作られているゲームは、Switch版になると操作性が悪かったりしますが、このゲームは全然そんなことはなく、操作もしやすかったです。
途中で出てくる間違い探しだけは、PCでやったほうが良いなと感じましたが
それ以外は全く問題なし。
Switch版のイラストギャラリーで、謎とされていたところのほとんどが書かれているので
お金を出して買う甲斐もあります。
イラストは可愛いし見ていて幸せになれます。
印象に残っている雑談
みんなと話しているのがとても楽しくて、もう少しこの時間が続いてほしいと思うくらいでしたが
私が特に印象に残っている会話です。
ツェネズがセロニカに対して持っている印象の話
ツェネズはセロニカを怖いと思っているらしい。
なぜなら、話していると責められているような気がしてくるから。
『優秀な人が持っている残酷さを感じる』と。
でもそれはきっと被害妄想で私のせいだ、と思っているようです。
めちゃくちゃわかる!!!とこのドアをこじ開けて握手したい気分でした。
私もセロニカと最初に話した時は、冷たい印象を受けて、どちらかといえば怖い印象もありました。
でもよくよく話しているとセロニカは良い人だし、優しい。
私もツェネズと同じように、優秀そうで怖いと思っていたのかもしれません。
こういうのって私生活でもありますよね。
めちゃくちゃ優秀で頭がキレる人と話すのを怖く感じてしまうこと。
ツェネズが言っているようにまさにそれは私のせいで、
優秀な人に嫌われたり否定されたりするのが怖いだけなんですよね……
そしてその人の言葉が少し柔らかくないってだけで、めちゃくちゃ冷たく感じる。
見下してるんじゃないか?暗に責められているのでは?とか卑屈になったりする。
こういう共感を持たせてくれると、そのキャラクターのこと好きなっちゃいますよね〜
スパイク「幸い、貴公はひとりではない」
ツェネズも言っていましたが、スパイクって本当に優しい人なんですよね。
ツェネズはドア越しにも関わらず、(いやドア越しの会話だけだからかも)すごく人の本質とか真ん中の部分を見てるんだな〜と思います。
例えばこの場面。
暇じゃない?と言う主人公に対して、
スパイクは自分がよくやっている、頭の中で空想の散歩をすることを主人公に勧めます。
しかし直後に
「こうは言ったものの別にひとりで時間を潰す必要はないのだぞ」
「幸い、貴公はひとりではない」
と言ってくれます。
相手の気持ちをとても考えている人だなと思いました。
「暇じゃない?」
と言っている人に対して空想を勧めると、それを「僕は空想が好きだからあまり話しかけないで」と捉える人もいるでしょうし、「一人で時間潰しなよ」と捉える人もいるでしょう。
この永遠のように長い時間が流れるムーンパレスで「暇じゃない?」と言ってくる人がいて
それに対して先輩として一人での対処法を教え、更に「でも一人で対処しようとしなくてもいいんだよ」って言ってくれるって
優しすぎませんか!?
スパイクのこの言葉には、ムーンパレス外の私まで癒されました。
一人じゃないって言ってくれるのは嬉しいし安心するよね。
ガラスパンの衝撃の真相予想
ガラスパンが友人に勧められた小説は『衝撃の真相』が売りのものだったらしい。
それを知った上で読み進めていると、衝撃の真相を予想するようになってしまって
実際の衝撃が自分の予想を超えられるのか?と不安になってきて読むのを途中でやめた、というお話。
あるある〜!!!!!
友人もそうだけど、小説の帯に『衝撃の結末!』とか『予想外のどんでん返し!』とか書くのやめてほしいです。
だけど例えばゲームの場合、このゲームは絶対ネタバレ見ちゃダメ!って言われるとどういう系統のゲームなのか大体予想がついちゃいますが、それでもその注意はありがたいので
小説もそうしてはどうだろう。
セロニカのTRPG
「暇じゃない?」の話題に対してセロニカは「みんなでTRPGでも作ってやりますか?」という返し。
思わずふふっと笑ってしまいました。
ここまでのセロニカに対するイメージは、冷めててみんなと会話したいってタイプじゃないように感じていたのですが
“みんなで”と言っているのがなんだか可愛らしく感じたし、TRPGってところも確かにセロニカ好きそうだな〜と感じてとてもほっこり。良かったです。
セロニカは冷たいのではなくて、人との距離感の取り方が上手なのかもしれない。
自分にとって最適な距離というのをちゃんと理解していて、それ以上は踏み込まないし踏み込ませない。ベタベタしない。
これは処刑人として学んだ距離感なのかなと思うと少し切ない気もしますが。
スパイク「無理に話そうとする必要はない」
「無理に話そうとする必要はないのだぞ」
「だれかと過ごすために話題が必要なわけでもないし」
「別にだれかと過ごす必要もないのだ」
スパイクの言葉はとても胸に沁みるし、温かくなる。
これ実際に言われたら、この人は私の全てを受け入れてくれている、と感じるような気がします。
言葉としてはこれだけなんだけど、
私の前で無理に話題を探そうとする必要はないよ。
ただ目の前の席に黙って座っているだけでもいいよ。
もちろん一人で過ごしてもいいんだよ。
と言われているような気がして、
その私の選択や言動の全てを、君の自由だし私はそれを受け入れるよって言ってくれているような気がしてくる。
スパイクは傀儡だったかもしれないけど、彼女にちゃんと政治を任せていたらかなり良い王になっていたんじゃないか。
印象に残っているイベント
長くなりそうだったので雑談と分けました。
ムーンパレスで起こった出来事、本当に楽しかったな〜
止まらないコーヒー
故障中の機械を操作してコーヒーを出すと止まらなくなってしまい、
ショックで固まる主人公。
その間も溢れ続けるコーヒー。
それを見てスパイク、ガラスパン、セロニカがみんなで面倒を見てくれてる感じがとてもほっこりしました。
ちゃんとドリンクバーから席が近い順に、この事態に気づいていくんですよね。
ガラスパンがテキパキ指示してて、みんながそれを手伝って「気にしなくて大丈夫だよ」って言ってくれるの
学校で嘔吐した時の優しい同級生たちみたいで(例えが汚い)みんな優しいな〜って。
しかも「王さまはこの娘の様子みてて!」ってガラスパンのこの指示も最高に良い。
何だこの優しい指示は。
タオル探したり床を拭いたりする係がいる中で、この娘の様子を見る係が必要だ!ってなるガラスパンちゃん。
友達になりたい。
16桁のパスワード総当たり
ここが一番気に入っている場面です。
16桁のパスワードを総当たりするまでの展開が本当にすごいと感じました。
まず箱を渡されて、16桁のパスワードがついていることを知ります。
その時点で、プレイヤーはどこかにヒントがあるのではないか?と思って他の住人に聞きに行きます。
でもだれに聞いてもまともな答えは返ってこず、総当たりを勧められる始末。
セロニカに関しては、このムーンパレスにおいて、総当たりこそが適切な方法なのではないか、とまで言いだします。
それでもプレイヤーとしては、そんなわけない、と思いますよね。
だってそんなの不可能ですから。
でも何回人に聞いてもどこに行ってもヒントはないので、
いやいや無理でしょ……と思いながらも総当たりを試してみます。
それしか出来ないから仕方なく。
プレイヤーが総当たりをし始めてから、良きタイミングでイベント突入となり自動で総当たりが進んでいくことになります。
セロニカに「総当たりこそ適切」と言われても、プレイヤー自身がムーンパレスにいるわけではないのでピンと来ないのですが、
プレイヤーが自らの意思で総当たりを試し、そこから自動になるもスキップは出来ず、そして主人公が本当に総当たりで16桁のパスワードを解除してしまう……という流れを体験して初めて、
セロニカの「総当たりこそ適切」の言葉が実感として分かるというか……
16桁のパスワードを解いてしまった主人公を見て、他のキャラクターたちは若干引いてますが、それでもそれが可能であるというのが『ムーンパレス』。
とても分かりやすくて、この世界が味わえるイベントだったと思います。
このパスワード総当たりの間、話しかけてくるみんなの言葉も面白い。
引いてるガラスパン、感謝してるスパイク、ビビってるツェネズ、TRPGを200年かけて作り上げたセロニカ。
セロニカの作ったTRPGが出来なかったことだけが心残りです。
あのくだり面白くて大好き。
その末に手に入れる話題が「お久しぶりです」なのも良い。
最初で最後の全員集合
5人が1つのテーブルを囲む、最初で最後のひととき。
まさかのここで主人公の名前がラーゼだということが判明。
これだけの時を過ごしてみんながそれを知らなかったことも衝撃。
この会議でのガラスパンちゃんがとても良かった。
二人で話している時は気づかなかったけど、ガラスパンは結構な毒舌だったんですね。
この後、現実の世界に戻るわけですが
この毒舌クール女子ガラスパンと、グイグイ系コミュ力オバケのラーぜの組み合わせは現実でも気が合うだろうし
そりゃ友達になるよな〜と思いました。
最後にみんなで話せて良かったし、
話題はよくよく考えれば重めなのに、楽しくて穏やかな空間だったな。
それも、ムーンパレスで時を過ごした5人だからこそ、こういう空気になったのかなって思いました。
残酷な話も恥ずかしい話も、空気はゆるっとしていてみんな自然体で素敵です。
フォースプーンについて
会話だとちゃんと理解するのが大変だったので、
フォースプーンの歴史についてまとめてみました。
南北を険しい山々に挟まれた谷地に位置する王国。
西にはグステン公国、東には聖スルトミアという国があり、フォースプーンはその2つの大国に挟まれていた。
2つの国の関係は良好ではなく、いつ争いが起きてもおかしくない状態。
間に挟まれているフォースプーンは地理的に重要な拠点となるため、両国とのバランスを保つことが常に求められ綱渡りの状態だったが
二国間の交易を中継ぎして利益を得ることもあった。
フォースプーンでは熱病が流行し、正式な王位継承者は次々と亡くなってしまう。
女児には王位継承権はないが、王家の血を引く継承者がいなくなり、女であるスパイクが男と偽って王位を継承することになる。
そんな中で、グステンから賄賂を貰ったフォースプーンの商人の一人が
スルトミアからグステンに引き渡す荷物を破棄してしまった。
グステンは、スルトミアとフォースプーンが結託して貶めようとしている、と戦争を始めることになった。
荷物は重要なものではなかったが、何か火種があればすぐにバランスが崩れてしまうような状態だった。
フォースプーンが戦地となり、それから間も無くスパイクはムーンパレスに逃げることになった。
その後、フォースプーンはグステンに併合した。
王が消えたことは歴史上の謎として語り継がれている。
跋文の解読
この文章は不可逆な精神状態に陥った92番の発言がまとめられたものなので、
何を言っているのかちょっと分かりづらいのでこれもまとめてみました。
跋文を分かりやすく書く
92番は箱舟4番船の備えの船員で、乗っていた船が地球の砂漠に落ちた。
どろどろの状態なので、成形しようと6番が言った。
しかし111番が機械に入るも魚にはなれず、ヒラタイウオムシになった。
6番は機械が壊れている可能性があるからもうやめた方がいいと言ったが、
111番は形は違っても中身は変わらなかったから大丈夫だろうと言った。
それで次は92番が機械に入った。
本人は気持ちよかったが変な感じがした。
6番がそれを見て大丈夫か?と問いかけ、それに対しての92番の返答(気持ちよかったから6番にお礼が言いたい等)を聞いて、
6番が111番に俺たちはなんてことをしてしまったんだ、やっぱり機械の損傷は致命的だったんだ!と叫んだ。
111番は92番にふざけてないよな?と聞くと、92番は、ふざけているわけではないこと・今後もずっとこの話し方になること・自分が何を話しているか分からないこと等を伝えた。拙く子供のような話し方で。
それを聞いて111番は涙を流す。
その後6番に言われて92番は船の中でじっとしてみんなと話しながら過ごした。
そして長い時間が流れた後、6番がその日も92番の側に来た時、人間の形をしたクラインと名乗る者と会うことになる。
クラインは92番に様々な質問をし、92番はそれをつまらないと感じて嫌な気持ちになった。
92番はクラインに「またどろどろになって機械でお魚になってとても気持ち良くなりたい」と言いますが、クラインは「ごめんなさい、それはできないのです」と言った。
更にクラインは
「あなたは不可逆な精神状態と呼ばれる状態になって現在では治療方法は見つかっていないけど、いつか見つかるかもしれないから、それまであなたと同じような状態の人たちとムーンパレスのふたつめの月(安楽の月)で待っていてもらう」
と言う。
92番もクラインの言っていることは正しいと感じ、それに賛成します。
すぐにクラインと6番と一緒に92番は月(安楽の月)にやってきました。
海がある素敵な月でした。
6番は「ごめんなさい」と言ってクラインは「さようなら」と言いました。
二人は船に乗って帰っていきます。
しかし、ここには92番のような人が5人いるので寂しくはありません。
それにあなた(編者)みたいな人がたまにきてくれて話を聞いてくれるのもとても嬉しいと92番は思っています。
編者の文:
92ばんの不可逆化後に成形装置の改良が行われたため、以降は事故は起こっていない。
『この本を92番と我らの永遠の未来に捧げる』
解釈して簡単にまとめる
月の民の船は事故か何かで地球に落ちてしまうことになります。
その時、彼らは成形をしていなかったため、その姿を地球人に見られてはまずいと感じて、
機械が壊れているかもしれない可能性がありながらも成形を急いでしまったのだと思います。
111番は外見が魚とは違った形になってしまいますが、中身は111番のままだったので大丈夫だったのでしょう。
しかし、魚の形になれなかったということは故障はしていたということです。
続いた92番がその機械の故障によって不可逆な精神状態に陥ってしまう。
不可逆な精神状態とは、永遠の命を持つ彼らにとっての死のようなもので
現時点では治療法が見つかっていない。
不可逆な精神状態に陥ってしまった者は92番を含めると6人。
全員が安楽の月にいるようです。
この『跋文』が書かれている間違い探しの本は、92番の言葉を元に作った本であることが分かります。
間違い探しの絵も、実際の出来事を題材にしているのだと思われます。
自分語り
このゲームをプレイして色々なことを思い出しました。
10代の頃、頻繁に友達と朝までファミレスにいた思い出です。
最初は会話も盛り上がりますが、徐々に話すこともなくなってきます。
ただ思いついたことを口にしたり、本当に何の身にもならないくだらない話をしたり、時にはずっと無言だったり。
みんな眠いのに誰も「帰ろう」と言わないし思ってもなくて、ただ一緒に時間を過ごして朝になったら帰るという、今思えば無駄と言えるような時間。
その子たちには何かあれば何でも話せたし、何もなければ沈黙にも何も思わない。
それもどれも、全て許されていると感じ合っていた頃が確かにありました。
良い思い出ですし、その子たちとは今でも友達です。
もちろん、もうファミレスに朝までいることはしませんが。
私にとってのムーンパレスは、永遠と思っていた青春時代かもしれません。
あの頃はそれが永遠に続くんじゃないかって思ってましたし。
最後に
そういう自分の思い出も、改めて大切にしようと思えるようなゲームでした。
いや、ほんとに素晴らしかった。
二、三時間とは思えない体験をさせていただきました。
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Published by Waku Waku Games.